スクアーロが死んだ。
なんだかそれを受容れられなくてそれをオレに言った奴をバラバラに切り裂いた。きっとこれは八つ当たりだ、うん知ってる。
嘘だ、そんなの信じられない、だって──あいつは此処を出て行ったときにオレに「帰って来る」って言ったじゃないか。嘘吐きは嫌いだ。
どうしてどうしてどうしてどうして。そんなことばっかり考えて苛々して八つ当たりしてカーテンとか縫い包みとか手当たり次第壊してたら、マーモンに「壊したって奴は戻ってこないよ」なんて言われた。
そんなの。お前に解るのかよ、とナイフを適当に投げたら軽々とかわされて、この部屋に居るのは危険だと思ったのかそそくさと出て行かれた。廊下に出て行く直前に、振り返ってぼそっとあからさまにオレに聞こえるように呟く。
「らしくないよ、ベルフェゴール」
知ってる、と自嘲してドアにナイフを突き刺した。知ってる。オレが柄にも無く動揺してることとか、うろたえてることとか。あれ、どっちも一緒の意味だったっけ。
解ってる。こんな、スクアーロひとり死んだぐらいで動揺するなんて。なんて、脆い。


「スクアーロ、どしたの」
やけに真面目な顔をしてやってきたあいつは、ナイフを弄んでいるオレの前に現れた。そういう空気がオレは苦手で、何だか真面目にならなきゃいけない気がしてナイフを仕舞う。何なのスクアーロ、と床に座り込んだまま見上げていた。
「急に仕事が入った」
「あっそ」
興味ないよスクアーロの仕事なんて。代わってくれる訳じゃないんでしょ、だなんてことを喋っていたような気がする。そうしているうちにスクアーロの様子が変だと思った。やけに真剣な顔をしていた。まるで今から死ににいくみたいな顔。それで不安になって、「ちゃんと帰ってくるよな?」と訊いた。
それで、あいつは「帰ってくる」と笑った。当たり前だろ、って。あんまりよく覚えていない。ぼんやりしてたし、それから一騒動あってこんなの思い出す暇なんて無かったから。でも、最後に出て行く直前にあいつが言った言葉だけはやけにはっきり覚えてる。
「   」
バッカじゃないの。そんなの別れ際に言ってどうすんのさ。そんなことされたって困るだけだし。
そんなことを考えていた気がする。


バカだなあ、ほんと。何やってるんだろオレ、関係無いじゃん、あいつのことなんて。別に、……べつに、ほんとうにすきなわけじゃなかったじゃないか。
思いっきりドアを蹴ったら、意外と大きな音が出て、ドアが軋んだ。もう何もかも消えてしまえば良いのに。そんなことを考えながらひっそりとした廊下を歩く。オレの立てる音だけが響いて、それが余計気に障った。なんだか世界中がオレの敵に回ったみたいだ。なんなの、勝ったら何か貰えるの? もし神様に勝つことが出来たら、オレの願い事は叶えられるだろうか──なんて現実逃避。願い事なんて持たないようにしてきた筈なのに。
普段使わない部屋にあいつは居るらしくて、その部屋のドアをオレは蹴破って入った。真白な部屋だ。何も無い部屋に、あいつひとりだけが眠っている。
修復された膚を見下ろす。生気を失ったあいつとの、最悪最低の再会。喉がからからで、声が掠れた。
「なにやってんの、スクアーロ」
崩れ落ちるかのように膝をつく。ねえ、何でそんなに無表情なのさ。似合わないよ、そんなの。
最後に会ったときの、最後の言葉を思い出す。思えば遺言みたいなことしてったんだな、と頭の何処かで冷静なオレが考えた。
本当に。なんで別れ際に言ったのさ。死んで帰って来るとか。返事訊かないままに終わるとかそんなの最低だ、スクアーロのくせに。
もう足掻きも呻きもしないスクアーロを揺さぶる。なんて、つめたい。反応は勿論無くて、そんなこと解りきってるのに、泣けてきた。
あぁあ。涙なんてもう忘れていたのに。何てことを思い出させるのさ。
殺すのはすきだ。でも、ひとを殺すことでスクアーロが居なくなるのならそんなのやめるのに。スクアーロの他に何もいらなかったのに。
「何で、」
神様は意地悪だ。いくつもある未来の中で、一番のデッドエンドを選びたがる。
……オレが神様に嫌われてるだけなのかな。
ねえ、どうすればいい。もう我儘言わないからさ。ちゃんと仕事だってやるよ。
だから、戻ってきてよ、スクアーロ。
なんて、ね。そんなこと言ったって、戻ってこないことぐらい、そんなこと、とっくに知ってるよ。そう呟いたら急に現実に引き戻されて、オレはこれから仕事があったってことを思い出した。また遅刻したりしたらボスに怒られる。
だから、もう行かなきゃ。
立ち上がる。膝の震えはもうなかった。
急に仕事が入ったんだ。
オレはあんたみたいに死んで帰ってきたりしないから。だって王子だし?
ドアを閉める直前に言い忘れに気付いて振り返る。
それじゃあ、スクアーロ──じゃあね、バイバイ。
ああそれと──


あいしてる、なんて言ってやんない。







あいしてる、//5000打自分で自分にリクエスト企画フリー文/070611/


自分で自分にリクエスト五千打です。おもいっきりうたかたの超短編を長くしただけです。携帯でしているところもあるので変換間違いやら誤字脱字等あればご指摘ください。光の速さで直します。 実はうたかたの中でこれが1番気に入ってるかもしれないです。 ベルがなんだかウザいほど後悔しているのは気にしないでください。こういう時だってあるんですだって王子だもの(殴) 一応フリーですがこんな暗くてウザい上に鮫が死んでる短編なんて持って帰ってくださる方なんていらっしゃられるのだろうか。はなはだ不安ですがまあ気にしないことにします。 こんな曖昧管理人がちまる(※ちまちま書いているの略)暗いめテキストサイトに来て下さった皆様に極限に感謝を捧げます!



うたかた様にてフリー配布していらっしゃったので頂いてきました。
管理人様とは知り合いです。あまりお話する機会が無いのですが割と日参サイト様だったり。
なんともいえない消失感を抱かせる文章が素敵です。
「憂果ちゃんの文は基本砂糖より甘いよね」と某知人に言われたので少しは見習いたいと思います、はい。

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