出会いは、キミの「音」だった

「ヤベ、弦買い忘れた」
「姫さん、はよせえやー」
「悪い!先戻ってろ、後から行く」

taleとして活動し始めて早4年。インディーズではそこそこ有名なバンドに成長して、CDもそれなりに売ってて、あわよくばそろそろメジャーとか考えたりする、そんな時期。
新曲ができたからとサエが持ってきた曲に4人輪になってあーだこーだ言い合って作り上げて、すっきりとスタジオを飛び出した。男なんて所詮いくつになってもガキのまま。行き先は楽器店。

「俺、ちょっとベースのメンテ頼んできますね」
将の一言で各々自分の楽器のコーナーにばらけて好きに買い物して、また適当に集まって帰って、いつもの光景のはずだったけど。
弦買いに来たはずなのに、なにしてんだ俺は。大して急ぐ必要もないから再度店内を物色しながらお目当ての場所に歩を進める。

(あれは…?)
ふと窓の外に人だかりを見つけた。音は聴こえないけど、場所的に考えて誰かが路上でライブでもやってるのだろうか、でもそれにしては人が多すぎる。気になって、急いた気持ちで店を出た。

聴こえたのは、ピアノと少し掠れたソプラノ。落ち着いたバラードに乗ったよく通る声が妙に心地よかった。
(なんだ、この感覚?)姿も見えない。わかるのは彼女の声だけ。特別歌がうまいわけじゃない。この業界にいるから、もっとうまい奴はたくさん知っているはずなのに、なぜか、すんなりと元からそこにあったものであるかのように、心に染み入ってきた。拍手が鳴る中、ぼーっと突っ立ってることしかできなかった。ありがとうございますー、と聴こえてきたのは歌声とはまた違う低めの声。

いつの間にかライブが終わっていたらしい。周りの観客たちががやがやとその場を離れていく音にはっと我にかえったとき、もうそこに彼女はいなかった。残されたのはメッセージボードだけ。そこには「来春 “LOTS”インディーズデビュー決定!」の文字が書かれていた。顔も名前も知らない女、そいつの声だけにこんなにも興味を持ってしまっただなんて、恥ずかしいから絶対に言わないけど。

絶対見つけてやるよ、そう心で誓った、ある冬の日。


はじまりのおとが鳴る日
( まあ、そう遠くない未来のスタートってことです。 )

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