恋愛っていうのは、考えているよりも難しい。
付き合うまでは『恋人』の存在が凄く幸せなポジションに見える。
けれど、付き合ってみると案外そうでもなかったりして・・・・、とりあえず不確かなものだ。
だからこそ、人の心は移り変わっていく―――――。不変であるものなんてこの世には存在しない。
忍足謙也はクラスの中でも明るく気さくで、とても人気者だった。
白石が「相変わらずお前は落ち着きがないなぁ」とボヤく横で、彼はガツガツと弁当を食べていた。
何か言い返そうとしているらしいが、食べ物が口の中に入って何を言っているのか聞こえない。
「今日、ちょっとの所に用があんねん。せやから、急いで食べなアカンねん。」
「ああ、ちゃんか。お前ら付き合うてどれくらいやったっけ?」
「もう一年経つわ。相変わらず、はいつ見ても美人やけどな。」
「お前ホンマちゃんの事好きやな。」
「・・・・・ほっとけ。」
顔を少し赤くさせながら、謙也は最後の一口である卵焼きに箸を付けた。
白石はそんな謙也を見た少しため息をつきながら「ホンマ、こいつちゃんの事好きやな」と思った。
謙也は物凄いスピードでご飯を食べた後、急いでのいる教室へ向かった。
「ー?おる?」
「・・・・・・・あ。」
「あ、おった!」
「何か用?」
「え・・・・?いや、別に何か特別用っちゅー訳やないけど。」
「私、今から図書室に行くんだけど。」
「・・・・・・あ、あははっ。そうなん?俺もしかして邪魔?」
「別に。ついてきてもいいけど。その代り喋ったりは出来ないよ、図書室だから。」
「あ、せやな。それは・・・・分かっとる・・・けど・・・」
謙也の彼女であるは美人だ。スラッとした体形で、媚びない性格。
謙也が彼女に惹かれたのはその『性格』にもあった。誰にも媚びなくて、真っ直ぐな性格。
思い切ってアピールして告白。初めての告白で「別にいいけど。」とOKを貰い付き合う事に。
「(相変わらず・・・やっちゃな。)」
しかし、謙也は少し悩んでいた。
性格がクールなのは分かっていたことだし、今更とやかくいうつもりもなかった。
しかし付き合うとなれば別だ。『彼氏』と『彼女』である以上、進展を気にするのは何も可笑しなことではない。
付き合って一年―――――いつまでも変わらない彼女の接し方に少し不満に思っていた。
「(何か・・・更に冷たくなった気ぃする)」
の後ろを歩きながら、考える謙也。
図書室に着くと、はもう既に座る席を決めていたかのように一番角の席に着いた。
謙也はあまり図書室に来たことはない。キョロキョロしながら、の横に座る。
「別に、することもないのについてくる必要、なかったんじゃないの。」
「・・・・・・え。」
「時間を有意義に過ごせないのってどうかと思うけど。」
「・・・・・・・っ。」
恋人からのまさかの忠告。
謙也自身はただ彼女であると一緒に過ごしたいだけなのだが、は少し違っていた。
自分の時間を阻害されるのは嫌い、また自分の時間を作らない人も嫌い。
性格がハッキリしている彼女だからこそ、ストレートに伝えることが出来る。
「(何でそないな事、言うん・・・?俺はただ、・・・お前と・・・)」
自分の中で不安な気持ちとに対する不信感が少しずつ募っていた。
付き合って一年。そろそろお互いの気持ちにも余裕が出来てくる頃なのに。
謙也の心の中はモヤモヤで一杯だった。は本当に俺の事好きなんやろうか?そればかりだった。
「・・・・。」
「図書室では喋れないって言ったでしょ」
「・・・・俺、教室戻るな。」
「・・・・・・そう。」
彼氏と彼女――――別に特別な事をしたい訳じゃない。
ただこの関係がいつまでも続くのはどうかと思うだけだ。謙也は静かにため息をついた。
図書室を背に向けて自分の教室である3-2に向かった。
「(やっぱり、もう無理かもしれん)」
の態度が冷たいのは最初から変わらない事。でももう少しマシになると思っていた。
謙也は人に優しい。でもそれ以上に彼女であるにはもっと優しかった。
しかし謙也の気遣いはもう限界に達していた。と付き合う事に対して、だんだんとキツいと思うようになっていたのだ。
「何や、謙也元気ないなあ。」
「・・・・・何でも、ないで。」
「何やその無理矢理笑った顔。」
「・・・・・・・はあ。」
白石はそれ以上謙也に何も言わなかった。
何となく謙也が悩んでいる理由を察したのと、自分が何かを言って彼の気持ちを揺さぶりたくなかったからだ。
何も言わないまま、静かにノートを開いて課題に取り組んだ。
と付き合ってもう一年。
一年も付き合ってきて築き上げられた絆は、確かにあった。
しかし、気づかない間に絆は崩れかけていた。
「転入してきた、ですっ!よろしくお願いします!」
一人の少女によって。
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ついに始まりました謙也君の連載。
この作品は今まで連載してきた中でも一番しっとりしてドロドロの連載になる事かと思います。