目に見えない世界。
ジゼルの幸福論
Giselle
wants to become happy. The bouquet of happiness to her
小春ちゃんに打ち明けてしまった事を少し後悔した。
どうせ分かって貰えない、という気持ちじゃなくて『申し訳ない』という気持ち。
小春ちゃんの困った顔はあまり見たことが無い。・・・けど、私が去っていく時小春ちゃんの顔は暗かった。
傷つけまいと思っても傷つけてしまう自分が嫌だった。
洗濯物をしにマネージャー部屋に戻らなきゃいけない。
そろそろさんも戻って来る頃。いい加減、この腫れた顔をどうにかしないと・・・。
近くにあった水道で顔を洗う。丁度腰にはタオルをかけていたため、すっきりとした。
仁王君の事が蘇るたびに、辛くなる。
今まで全部、話してきた事・・・接してきたことが嘘だったとしたら。
あの優しさが全部嘘だったとしたら・・・。
いや、きっと嘘なんだと思う。今冷静に考えると、可笑しいなと思う事は多々あった。
まず、光が私の部屋に来た時。
仁王君と光は必ず私の部屋のドアで出くわしたはず。――――なのに、仁王君は光の事を何も言わなかった。
カレーを作ると言った時の仁王君の顔。「何で?」と言った顔だった。
仁王君が私の事を信じてくれるようになったのは、何故なのか。それは私も知らない。
そして最後に『金ちゃん』 仁王君は私と金ちゃんを話す事を妨げていた。全部途中で会話が途切れる私と金ちゃん。
可笑しいな、とは思っていた。けど・・・、それでも私は仁王君を信じたかった。
「馬鹿みたい・・・・」
自分は皆を裏切っているのに。
自分は人を信じたいなんて、ふざけているに決まってる。
でも・・・、でも。私は仁王君に助けられたから、彼の事を責めることが出来ない。
「・・・・?何しとるん?」
「!!」
聞き覚えのある声だった。
それは今私の脳内からこびり付いて離れない人。
「仁王君・・・・?」
「そうじゃけど・・・・。どうかしたんか?」
「・・・・・・。」
上手く話せない。
何でだろ・・・?今までちゃんと話せていたのに、『騙されている』と聞いたからかな・・・?
上手く笑えないや。もうここで言ってしまいたい。
「仁王君・・・・、もう・・・・・。」
「・・・・?」
「もう・・・・・、」
“私の事は構わないで”
その一言が言えない。
私がその一言を言えば、きっと仁王君は優しくしてくれなくなる。
そしたら・・・、私・・・・。
「ううんっ、何でもないよ!今から戻るね、」
「お前さん・・・目腫れとる・・・?何かあったんか?」
「ちょっと感傷的になっちゃっただけだから。本当、気にしないで!」
言えない。
怖いから。
仁王君が裏切るって、
仁王君が味方じゃないって、
仁王君が騙してるって、
見るのが怖いから。
まだ、一人は怖い。
だから、私は卑怯かもしれないけど・・・。
「大丈夫か?あんまり一人で悩んだらいかんじゃろ?言うてみんしゃい、」
「ううん。大丈夫だよ、何かあったら言うから。」
仁王君はふんわりと私を包み込んでくれた。
その腕の中がとても暖かくて、何とも言えない気持ちになった。
「ありがとう、」
今はまだこの優しさに甘えていたいから。
例え、仁王君が私の頭上で不気味な笑みを浮かべていたとしても。
今はまだ、信じさせて――――――仁王君。
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ヒロインの気持ちも分からないでもないかなぁ・・・と思います。
まだ仁王が優しく接してくれている時は、それに甘えたくもなりますよね。
仁王の最後の笑みで奴が何を考えているのか、察して頂けたら嬉しいです!