SS/AW












SPRING
隣の席の椎名。第一印象;可愛い,女の子?―そんな事をぼうっと考えていた、彼がうちのクラスに転入してきた日。あの日から早一ヶ月。

「椎名くん、昨日またフットサルしてたでしょ?」
(椎名、昨日はよくも顔面に当ててくれたわね)
「ああさん、僕見られてたんだ 恥ずかしいな」
(昨日の顔面ブロック最高だったよ、とんだ笑い者だね)
「ううん、そんなことない。すごく格好良かった」
(女面した男に顔傷つけられるなんて思ってもみなかった)
さんに言われると嬉しいな、ありがとう」
(そんな女面した男より可愛いくない女は何処の誰だろうね)
「椎名くんったら、褒めるのが上手いのね」
(つか自分のこと女面って認めちゃってますけど?)








「周りのやつらには微笑ましい会話に見えるんやろなー」
「俺らはひやひやしながら見てるのにな」
「このふたりで地球温暖化止められると思うで」
「あの辺りだけ氷河期だもんな」


この関係が表面化するのも、時間の問題。














SUMMER
昇降口に座り込んで、雨が止むのを待っている。
お天気お姉さん、本日の東京は晴れではなかったんですか?確か降水確率は30パーセントぐらいだった。もちろん、傘なんて持ってきていない。雨だから、ロッサの練習は休みになる。だから急いで下校する必要もない。しかし、ゆっくり家に帰れる訳でもない。傘ないし。……早く止まないかな。


「傘ないの?」
「───あー、ハイ」


端から見たら、どんな関係だ、と思われかねない。説明しよう。はじめの妙な間は、振り返って俺がこの女子を誰かと脳内で照らし合わせた時間で(その結果、同じクラスの女子だと判明)、敬語を使うのは、コイツと俺があまり仲がよくないからだ(コイツに限らず、クラスで仲のいいやつは皆無に近い)。確か、。そうそう、。新学期、自己紹介にて、いい名前だな、なんてぼんやり考えていたことがあった。突然、押し殺した様な笑い声が聞こえたと思ったやいなや、さんが吹き出した。


「敬語、禁止!」
「え、」
「いいじゃん。ね、判った?」
「は?はあ、」
「つうことで、雨が止むまでなにかしよっか」
「はああ?!」


(ずーっとしゃべりたくて仕方なかったの!)(本当にヘタレね!)














AUTUMN
ー」
「ちょ、気安くって呼ばないで」
「それ私の台詞だから」
「僕、のこと大好きだなー」
「ユンさっきからおかしいけど大丈夫?まあ俺は愛してるけどね」
「うん、英士途中まで同意見だ、後半おかしいけど」
「だよね、僕ら愛し合ってるんだ。だからユンは国に帰って」
「いやお前もついでに帰っとけ」
「ヨンサひっど!大丈夫、僕愛されるよりも愛したいマジで派だから」
「いやいや聞いてないし、大丈夫じゃないし」
「じゃあ聞くけど」
は」
「「どっちを選ぶの」」

「どっちも選ばないよ!」



















WINTER
吐いた息が白く広がった。気温は氷点下と常に隣り合わせだ。それなのに、防寒にマフラーだけとは甘かった。手の先っちょの感覚が薄れてきている。耳も少し痛い。必死に手を擦って、息を吐いてバスを待っている。我慢出来なくて、口から零れた「寒い」は、誰に伝わることもなく、冷たい空気と同化していった。不意に、ジャージの袖が後ろから回ってきて、私を優しく抱き締めた。痴漢にしては洒落ている。少し怖くて、ゆっくり後ろを振り返った。


「え、横山?」
「あ、おはよう
「何この空気、つか何してんの」
「寒いって言ったのはそっちだよ」
「いや言いましたけど!」
「俺も寒いから丁度いいし」


周りの人に、若いっていいわね〜みたいな目で見られるじゃないか。だけど、タイミングを図ったかのように、人っ子一人いない。朝だからか、それともクリスマスだからホームパーティー?それにしても、なんなんだ横山。私の記憶が正しければ、最後に話したのは9月の体育祭のリレー練習のときで、「私は横山にバトン渡せばいいんだよね」「多分」という一往復にも満たない会話以来だと思う。だってこいつ学校ではほぼ寝ているし、起きてても読書に勤しんでいるか、私たちの知らないところでサッカーでもしているのだろう。だからこいつとの接触はほとんどない。どういう人間なのかも、未だ定かではない。


「来週のキックオフ、俺出るから見て」
「日曜の朝早くからやってるやつ?ていうか離して」
「つか今日昼からホームで試合あるから来い」
「(無視かい)えええ急すぎ!ホームてどこだよ、ドリプラ?」
暇だろ。お前は映画でも観る気か」


どうして暇ってバレたんだ。(バス乗ってケーキでも買いに行こうと思ってたのに)ていうか今日試合だったのね。この上なく急だ。私が今世紀最大(と思われる)暇人かつ、めんどくさがり屋じゃなきゃ、この約束は成立しなかったよ!(クラスの子主催のクリスマス会が本日あったのだが、めんどくさくて不参加)断る理由もないし、暇だし行こうかな。ていうか、


「どうして私?」
「は?」
「他に暇な男子とかいるでしょ、山本とか」
「だってさ、」
「あ、バス来た」
「もういい(のアホ)」
「え、なに。つかそろそろ離して」


(誕生日の試合、お前に観てほしいんだよ)

2style.net