信じてた。彼の言葉にも、態度にも、ちゃんと愛がこもっているってこと。素っ気ない振りをして、本当は私のことを一番に考えていてくれてるんだって。いつからだっただろう。彼の眼が、あんなにも怖いと感じたのは。初めて目が合ったときも怖かったけれど、胸にグサリとくる眼差しなんかじゃなかった。告白して、奇跡的にOKをもらって、人並みの戀をした。彼が彼だけに、デートはほぼインドアだったけれど、そこに流れる時間には愛があった。私は、それを感じることが出来ることがとても幸せだった。
いつからか、言葉が薄っぺらなナニカになっていった。彼はもともと、「好き」とか「愛してる」なんて自分からは言わない。だからいつも私は聞いていた。「ねぇ、私のこと好き?」初めは、「うん」という短い言葉でも満足できた。きっと、愛がこもっていたから。いつからか、「好きだよ」と言ってくれるようになった。だけど、なにも感じない。不思議だ。あんなにも待ち望んだ言葉なのに、その言葉は、私の前でゆらりと落ちて消えてしまった。

どこで間違えてしまったのだろう。どこで愛を置き去りにしてしまったのだろう。私の好きと、彼の好きが不等号で繋がれている。初めはきっと、イコールだったはずなのに。ねぇ、これは私のせいなの?



「、帰るよ」
「あ、うん。 今行く」



大好きだった彼の背中。バイクで帰ることが大好きだった理由。残酷にも、私の気持ちとは裏腹に、まだ好きでたまらないこの背中に、額を押し当てる。春夏秋冬の様々な思い出が蘇っていく。違う!今そんなこと思い出さなくていいの!と心に告げる。言わなければまるで、別れを受け入れているかのようで。だけど心は止まらずに、私の目に泪を浮かばせていた。



「送ってくれて、ありがとう」
「ん、じゃあまた明日」



立ち去る彼の後ろ姿は、好きだった頃の彼のままで。変わってしまったのは、私の方だと言っているようだった。目に溜まる泪は、あの頃に戻りたい、と叫んでいた。

(それでも私は、彼が再び振り向いてくれるのを待っている)
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