僕は塵袋に入れられて捨てられたわけですが、両親が残したものが一つだけあるのです。
 それは手紙でした。荒々しい文字で書かれた、母が僕に宛てた手紙です。
 院長先生はそれを僕が三歳になった頃に渡してきました。その頃の僕はまだ文字を読めなかったのですが、両親が僕にくれたものなのだと思えば苦である筈もない。僕は勉学に打ち込みました。所詮幼児の熱意ですが、それでも当時の僕は真剣でした。お母さんは僕に何を伝えてくれるのだろう。お父さんは僕に何を望むのだろう。
 自分が親から捨てられた立場であることは理解していました。毎日毎日言い聞かされていたからです。それでももしかしたら、いつか僕の家族を名乗る人がここから連れ出してくれるのではないかと。両親が僕を捨てたというのは何かの間違いで、或いは拠無い事情で仕方なくそうしたのだと。そういった夢を見ようと必死でもありました。
 やがて平仮名を覚え漢字を覚え、僕は長いこと仕舞っていた手紙を引っ張り出しました。
 果たしてそこに何が書かれていたか!
 間違いなく、僕に宛てた手紙でありました。赤子の、生後間もない、名無しの僕に向けた、呪いの言葉でした。




2018.3.14




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