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高校2年生最初の始業式、うちのクラスに国際留学生がやってきた。
…正確にはうちの『クラス』じゃなくて『学校』なんだけど。





新学期である。
窓から見える桜の木にはもうちらほらと葉が混じりはじめ、明日が入学式のこの学校では満開の桜の中での入学式なんて漫画みたいなことはできない。
まあ正直それはどうでもいいんだ。
入学するのは私じゃないし。
なんとなく思っただけ。
旧クラスでの顔合わせにも近い朝礼を終え、それぞれクラス番号が書かれた紙が配られる。
掲示式じゃないから教室に入ってメンバーが全員揃うまで誰がいるのかわからない。
友達が一緒だといいのに。
荷物をまとめながらそう思う。
人間関係の構築はめんどくさい。

まとめ終えた荷物を片手に階段を上がり、新しいクラスに向かう。
黒板にはそっけなく出席番号で書かれた座席表が貼られていた。
仕事しろよと思わないわけではないけど、人数が増えた時は1席足して数字を書くだけで新しい座席表ができるのだと考えると合理的な気もする。
自分の場所を手早く探し、椅子を引いた。
――しばらくすると教室が少しずつ人で埋められていく。
見たことのある顔とない顔が半分ずつくらいだ。
特に素行の悪い人はいないようで安心した。
できることなら平穏な学生生活を送りたいのだ、私は。

「全員揃ったわね?
じゃあ改めて朝礼始めるわ……っと、その前に」

5分ほどしてやってきた担任はさくさく朝礼を始めたけど、何故かすぐに中断する。
にっこりと楽しそうな笑顔。
なんだか無性に嫌な予感がした。

「今年から本校は国際留学生の受け入れを始めました」

ええーっ、と教室中から驚愕の声が上がる。
私は声を上げることさえできず顔を引きつらせていた。
国際留学生ってそんな、また面倒な。

「このクラスにももちろん来るわ。
1年生の子もいるので登校は明後日、平常授業開始時です」
「やっべーオレ英語喋れねー!」

誰かがおどけて言うと、向こうで日本語の授業を受けていたから大丈夫よという声が返ってきた気がする。
曖昧なのはしっかりと聞いていなかった所為だ。
……このクラスにも来るのか、留学生。





***





入学式という名の休日を経て、とうとう平常授業が始まった。
当然朝から留学生の紹介がある。
一体どんな人が来るのかと思っていたら、朝礼で担任が連れてきたのはとんでもない美少女だった。
肩の辺りで切りそろえられたさらさらの紫髪に少しつり気味の大きな赤眼、ふっくらした唇とすっとした鼻梁がバランスよく小さな顔に配置されている。
肌は白いし手足は細いし、神が平等でないのを知らしめているような、そんな美少女。
…ただ、彼女は大きなレンズの眼鏡をかけ、さらには男子用の制服を着ていた。
クラス中の好奇の視線が集まる中、彼女は自己紹介のためにゆっくりと唇を開いた。

「留学生のティエリア・アーデです」

男かよ…!!
多分クラス中が1つになった瞬間だと思う。
美少女は美少女ではなく、あくまでも美少年だったのだ。
確かに女の子というには高すぎる身長をしているし、男子制服を着ている。
それでも美少女と見間違えられるなんて…ますます神は不平等だ!
ひそひそと興奮したような声が上がるのを聞きながら切にそう思った。
美少年…もといティエリア・アーデは少し眉を上げただけで特に何の反応もしない。
口も開かない。
まさか自己紹介はこの一言かと思った矢先、先生が声をかけた。

「ティエリア、自己紹介は…」
「名前以外に話す必要があるのですか」

見事に一蹴。
先生は仕方ないなぁと言わんばかりに肩をすくめる。
…なんていうか怖いなぁティエリア・アーデ。
確かに美人だしスタイルもいいし頭もよさそうだけど関わり合いにはなりたくないタイプだ。
まぁ席が遠ければ……いや、私の前後左右――始業式後に早速行われた席替えで一番後ろをゲットしたから正確には前左右なんだけど――5席に来なければきっと関わらなくてすむ。
どうせ次の席替えなんて1ヶ月かそこら先だしその頃には仮に隣になったとしても学校のあれこれ教えるとかそういう面倒なことには……

「ええと、じゃあ席はあそこ、一番後ろの一ヶ所だけ空いてるところです」
「わかりました」

何故なる!!
何故よりにもよって私の隣に来る!!
何故私はくじ引きでこの席を引き当てた!!
何故昨日席割りを作った時点で不自然な空席に気づかなかった!!
気づいていれば昨日のうちに交換してもらったのに!!

さん、ティエリアをよろしくね」

…でも今更席順変えてくれなんてあまりにもティエリア・アーデに失礼だ。
いいや、後であの不幸な友人沙慈に愚痴を聞いてもらうことにして、私は腹を括ってしまおう。

「はい」
「ティエリア、移動教室とかわからないことはさんに聞いてね」
「そうさせてもらいます」

そう言いながらティエリア・アーデは机の間をすり抜けて私の隣に鞄を置く。
腹を括るとは決めたものの、私は一体どう接したものかと考えあぐねていた。
ティエリア・アーデは黙々と鞄の中を整理しているし、自己紹介は朝礼が終わってからでも遅くはないはず。
今のうちに考えなくちゃ。
――なんて思っているときほど時間が経つのは早く、ただでさえ短い朝礼がさらに短く終わったように感じた。
結局気の利いたことは何も考えてないけど先生の言葉に頷いた以上、無視するわけにもいかない。
少しだけ喧騒が戻る、1時間目が始まるまでのわずかな時間。
多分今を逃したら挨拶ができない気がする。

「えっと…アーデくん」
「ティエリアでいい。何だ」

えいやっと声をかけてみたはいいものの…ダメだこの人雰囲気が怖い。
鋭い赤眼に真正面から射抜かれる。
でもここで黙ったら負けだと言い聞かせ、自己紹介のため口を開いた。

「スメラギ先生もちらっと言ってたと思うんだけど、私は
困ったことがあったら私にできることなら手伝うから言ってね」
「ティエリア・アーデ。
君は必要なことだけ教えてくれればいい」

…何この上から目線。

「じゃあ必要なことがあったら聞いて、答えるから」
「そうさせてもらう」

本当に何だこの上から目線の物言いは。
一体誰の教育だ。
と思いながらもそう突っ込めるものでもなく。
だから人間関係の構築ってめんどくさいんだよ。






***





幸いにも今日は移動教室はなく、特に教えることもないまま昼休みを迎えた。
何かしたといえば教科書がまだ届いていないのに見せてもらおうともせずノートと筆箱だけ出して授業を受けているのを見かねて半ば無理矢理机をくっつけたくらいだ。
教科書がないのに見せてもらわないとは一体どういう意地なのやら。
内心ため息をつきながら教科書を片付けに行こうと机に手をついた矢先。

「やあティエリア、ご飯食べようか」
「何故君がいる、アレルヤ・ハプティズム」
「だってきっとティエリアのことだからクラスメイトを威嚇してるんじゃないかと思って」

がらりと教室のドアを開けて入ってきたのは長身で片目を前髪で隠した外人さんだった。
その後ろには小柄な…というか、片目の人の背が高すぎるせいで小さく見えてしまう同じく外人さん。
ティエリアがアレルヤ・ハプティズムって呼んだから片目の人はその名前なんだろう。
上履きのラインから片目が3年、小柄が1年みたいだ。

「それに『君』じゃないよ、『君達』」
「俺もいる」
「刹那……。
……どうして来たんだ」
「アレルヤに連れてこられた」
「2人とも人見知りがちだから慣れるまでは一緒にいてくれってロックオンに頼まれたんだ」

だからご飯食べよう。
そう言っている間にもアレルヤ・ハプ……何だっけ、アレルヤさんは空いている椅子を引っ張ってきてアーデくんの正面に腰掛けた。
もう1人の刹那くん、も同じく座ろうとしたけど近くに空席がない。
けれどすぐに教卓のそばに立てかけてあるパイプ椅子に気がついたらしく、それを取りに向かった。
横目でそれを見つついただきます、と心の中で呟いておかずに箸をつける。
隣ではティエリアが予想外にも何やらぎゃいぎゃい怒鳴っている。
冷静そうに見えて意外とキレキャラなんだなぁ…。

「あ、ねえ君。
もし嫌じゃなかったら僕たちと一緒にご飯食べてくれないかな?」
「……は?」

どうでもいいことを考えながら食べていたら一瞬反応が遅れた。
誰か別の人にかけられた声かと思ったけど、明らかにその声は私に向けられている。
一応の礼儀として顔を向けるとアレルヤさんがにっこりと微笑んでいた。

「さっきティエリアに叱られて気づいたんだけど、こうやって元の学校の人が構ってたらいつまで経ってもこの学校に馴染めないんじゃないかって。
だから、ティエリアが馴染むためにもクラスメイトの君に一緒にお昼を食べてほしいんだ」
「俺は学べさえすればいい、余計なことをするなアレルヤ・ハプティズム!」
「…ロックオンに、学校であったことを聞かれた時に困るんじゃないか」
「ああ、授業内容とかじゃなくて友人関係気にするしね」
「…………
面倒だろうとは思うが会話だけ参加してくれないか」

何だそりゃ。
という言葉は何とか飲み込んで別の言葉を返す。

「……ああ、何かさっき言ってた『ロックオン』に聞かれた時に困るとかそういう?」
「そうだ。
彼は妙に鋭いから下手にごまかしても気づかれる」
「だからクラスメイトと会話して、そのことを話そうと」
「理解が早くて助かる」
「…業務的だなぁ…」

というかティエリア相手に雑談がしづらいだけです。
これもまた飲み込んで笑顔だけ向けておいた。
私の平穏な日々を返せ!!






ヒロインがモノローグだらけですみません。
1期ティエリアと、会話ができない!
あ、多分学パロ全部このヒロインになると思います。
リジェネ夢もこの子と同じです。
リジェネと、名前だけ出てるキャラを合わせてもまだ6人しか出てませんから。
先生の割り振りとかクラス分けとかも決めたんだから使わなきゃ…駄目かなって…。