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定期試験を目前に控えたある冬の日の英語の授業中。
窓から2列目という微妙な席ながらも私は外を眺めていた。
冬の空気は乾いているけど澄んでいて、空が綺麗に見える。
高い位置にすっと薄くかかる雲。
いつもよりも高く見える空。
少し黄色がかったような地平線から白みを帯び、天頂に至るまでに淡い青に変わる。
雲がかかったところは他のところよりも少し薄い青で、同じように見えてもあちらこちらに変化のある空を見るのが好きだ。
だから今日も空を見ようと思っていた。
朝までは思っていたのだ。
ところが実際には眺めるのが精一杯で見るまでには至らない。
理由はひとえに窓から降りそそぐ陽光にある。
窓ガラスで寒気は遮られ、外の寒さなど微塵も感じさせないぽかぽかと暖かい日光だけが教室を照らしていた。
嫌いな授業中、こんな快適な気温になってしまっては眠気がむくむくと頭をもたげてくるものだ。
落ちそうになる目蓋を空が見たい一心で何とか持ち上げてみるけどこの眠気にはとても勝てる気がしない。
私がこうして眠気と必死に戦っているのに、英語のコーナー先生は講義形式という最も眠気を呼び起こす授業形式で追い討ちをかけている。

…もう駄目だ、寝そう。

頭が大きく傾ぎかけ、それをぎりぎりのところで戻す。
机に頭をぶつけるのはごめんだ。
そう思って何とか耐えたのに、先生は運悪く私が頭を上げるところだけを見てしまったらしい。

さん。
眠ってしまうほど簡単ならば教科書の94ページを訳してもらおうか」

指で教卓を叩きながら何とも表現しがたい腹の立つ顔を向けてくる先生。
仕方なく教科書に目を落とし、口の端が引きつった。
いつの間に3ページも進んでるんだ。
せいぜい92ページくらいまでしかやらないだろうと思っていたから、当然予習もしていない。
答えられなかったらあの慇懃な口調で嫌味を言われるのは目に見えているのに!

「わからないかな?」
「…わ……わかり、ま…」

先生がチョークを取るために視線をそらしたその隙を突くように手に紙が触れた。
反射的に目を落とし、それが何で誰から寄越されたものなのかがわかると素早く教科書に挟み込む。

「わかります」
「それならば、どうぞ訳してくれたまえ」

教科書を目の前に掲げるように立ち、あたかも教科書を読んでいるかのように寄越されたルーズリーフを読み上げる。
私が言葉を紡ぐたびに先生はどんどん苦い顔になった。

「…よろしい、座りなさい」

94ページに相当する部分を読み上げたところでストップがかかる。
先生は今まで見たことがないほどに苦々しい顔をしていた。
いい気味!
ぱっと隣を見ると、助け舟を出してくれた紫髪の友人は暖かな日差しの中で読書に勤しんでいた。
けれどすぐに私の視線に気づいたのか、顔を上げて悪戯っぽく微笑む。
私もそれに笑い返し声を出さずにお礼を言った。
彼――リジェネはいいよ、と言うように首を振り、シャーペンを手に取ると新しいルーズリーフにさらさらと何か書きつけて寄越した。

『さっきは何を見てたんだい?』

…カンペに続き今度はお手紙ですか。
こういう時だけ妙に可愛いな、と思いながら私もシャーペンを握る。
一言だけ書いた文字は『空』。
先生が板書のために背を向ける瞬間を狙って隣の机にそれを滑らせ、リジェネが何食わぬ顔で目を通した。
そしてちらりとこっちを見て大げさにため息をついてみせる。

『何だ、僕を見てくれてるんだと思ってたのに』

戻ってきたルーズリーフはとんでもない言葉を載せていた。
思わずむせそうになったのをぐっと抑え込み、リジェネを睨みつけた。
対するリジェネは文面通りの残念そうな顔。

『心臓に悪い。
そういうの禁止!』

がりがりと書き殴ってリジェネに回す。
返事は早かった。

『心臓に悪い、ってことは意識してくれてるんだろ?
は可愛いね』
『だから…もう、何なのかなリジェネは!
何でそういうのしれっと言うの!』

海の向こうではこれが当たり前のことなのかという疑問が一瞬頭をよぎったけどそれを振り払い一気に返事を書き上げる。
ここは日本であって決してリジェネが育った国ではない。

『だって好きだし』

眼鏡越しの瞳が細められ、すっと文庫本に落とされた。
私はそのたった7文字に目を奪われる。
数回読み返して意味をきちんと理解すると、授業中だというのに心臓がばくばくと早鐘を打った。
いや、理解してない、きっとこれは深い意味なんかないんだ、そうだ、リジェネだもんこのくらい呼吸と同じくらい簡単に言うしそれに『好き』なんていくつも意味があるしね!
…たった7文字で私を動揺させた張本人は時折流し目を送るだけで特に何もしてこない。
ああ、もう、眠気なんて吹き飛んだ。

「どういう意味か知らないけど、そういうのはちゃんと口で言いなさい!」
「うん、大好きだよ、
「ぎゃー!!!」

チャイムと同時にリジェネに言葉を叩きつけたけどあっさりとカウンターをくらって撃沈した。
本当にこいつの発言は心臓に悪い!





学パロは日本の高校に00のみんなが外国人留学生としてやって来たよ!みたいな感じの設定です。
まずはリジェネから。
とりあえず隣の席の人がこんなんだったら嫌だな!(大笑