熊野に生まれて後悔したことは一度もない
頭領直属の部下だった父を尊敬していたし
母上はとても優しかった
兄さんはいつも最後には私を助けてくれた

父上と母上が離婚した時
兄さんと母上と離れて暮らすことになった時
父上が死んだ時
私は泣くことしかできなかった
私はあの頃から成長したのだろうか


広大な空と海
熊野の雄大な自然の中で育ってきた
女の子達とは遊ばずに
ずっと兄さん達についていった
海に行ったり山に行ったり
遊んで、武術を学んで
能や楽も学んで
あの時がずっと続けばよかったのにと何度も思った


海が穏やかになる時間
夜空に飛ぶ二種類の蛍
朝凪と夕凪
源氏蛍と平家蛍
似ているけど違うもの
違うけど似てるもの


幼なじみの私の上司
私を育てて見守ってくれた人達
熊野の土地と人々
全て私の大切な存在




同じ瞳、同じ髪、よく似た容貌
違うのは声の高さと背丈と性別
そして組する場所
私は中立の熊野にいて
彼は今、熊野にいない
一緒にいることができたのはたったの六年間
でもどこかでつながっている心と身体
同じ時間に生まれた私達
今あなたはどうしている?
あなたが私の大切な存在を奪おうとするなら
私は戦うよ
大切な存在を守るために






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